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アイレス35。 アイレスが35mmレンズシャッター機に進出したのは、二眼レフ最盛期の1954年で理研光学とほぼ同時期である。両社とも対米輸出に力を入れていたので、バイヤーからの要請に従って開発したのだろうか。最初のモデルは、後にT型と言われるこのアイレス35である。ユニークなボディ前面にある大きなレバーはシャッターレリーズ用であって距離調節用ではない。
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アイレス35U。 1954年4月のフォトキナでライカM3が発表された。この新しいカメラに発展途上にあった日本中のカメラメーカーにショックが走った。特にそのファインダーに注目が集まった。ところが、アイレス35Uが僅か6カ月後の同年10月にM3と同様のブライトフレーム付きの連動距離計が採用され、その対応の速さに驚かされたものであった。
この方式の原点は戦闘機の照準器で、零戦には富岡光学製と千代田光学精工製が搭載されていた。
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アイレスV型のなかで異色な存在はこのアイレス35VCである。ボディは、これまでの男性的な八角形から女性的で優美な長円形に変わり、M型ライカのデザインをよほど意識したのか、ボディ左側にセルフタイマーと巻き戻しレバーを配置している。パララックスも自動修正になった。1957年9月にコーラル4.5cm F2.4付が、1958年3月にコーラル4.5cm F1.9付が発売された。この時代は、類似意匠についてドイツメーカーからのクレームは無かったようだが、数年後には大きな問題になった。
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アイレス35X。レンズ交換を可能としたアイレス唯一のカメラで、1958年10月の発売。
ボディは八角形にもどり、ビハインドシャッター搭載のためひと回り大きくなった。距離計との連動のためにヘリコイドはボディ内に置き、レンズ全群を交換する。標準レンズはコーラル4.5cm F1.5、同F1.8、交換レンズは、広角が3.5cm F3.2、望遠が10cm F3.5があった。開発に手間取った上に製品の歩留りが悪く、アイレス倒産の原因となったカメラと言われた。
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アイレスレーダーアイ。アイレスVCの後継機と言えるデザイン。外光式のセレン露出計が内蔵されており、ファインダー内部でその指針を追うことができる。シャッターは最高速 1/1000秒のセイコーSLSである。発売は1960年5月だが、2カ月後の同年7月にはアイレス写真機製作所は倒産し整理に入り、日本写真機工業会を退会したのは翌1961年3月なので、その間は債権者の管理のもと生産は続けられたのであろう。
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アイレスが35mmレンズシャッター一眼レフに参入したのは1959年で、「日本最初」の栄誉は東京光学のトプコンPRに譲ったが、PRに採用されたシチズンMVシャッターには自動絞り機構がなかった。一方、PRの後塵を拝したものの、このアイレスペンタ35には最新鋭のセイコーシャSLVが採用され、初の自動絞り付きのレンズシャッター一眼レフとなった。このSLVは、クイックリターンミラーに対応していたが、アイレスペンタ35には採用されず、その栄誉は翌1960年発売のトプコンウインクミラーに譲る。Qコーラル 5cm F2.8付は1959年10月、Hコーラル 5cm F2月は翌1960年1月の発売。
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アイレスバイスロイ。アイレス唯一のスプリングカメラで、120フィルムの6×6cmと6×4.5cm兼用機。最大の特徴はファインダーで、明かりとり窓を持つブライトフレーム付で二重像合致式の連動距離計が入っている。35系の血を引くアイレスらしい仕様だが、ボディ側はフィルム送りが赤窓式で、自動捲き止めや二重露光防止などの装置はなく極めて平凡である。高嶺光学に製造を依頼したカメラで、ベースはミネシックスVSである。
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アグフア(AGFA)は、1867年にドイツ・ベルリンで誕生した化学薬品メーカーで、1925年にはリーチェル社と合併してカメラ製造に進出した。リーチェル社を併合した直後のカメラが、このニトールとニノン(斜め下の写真)である。いずれも茶革の蛇腹の美しいルクスス(Luxus) カメラで、ニトールは、乾板と120ロールフィルム兼用だが、ロールフィルム専用のスタンダードもある。
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アグファ ニノン(Ninon) |
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1936年発売のトロリクスは、120ロールフィルムを使うボックスカメラ。真っ黒なボディは、ベークライト近似の合成樹脂トロリ(Trori Plastics)製である。その材料をカメラ名にしているのは化学薬品メーカーアグファの面目躍如。
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120ロールフィルムを使うイゾレッテシリーズは寿命の長いカメラで、1938年から1960年まで製造された。戦前の製品は、この写真のイゾレッテ オリジナルと言われているもので、6×6cmと6×4.5cmの兼用機となっている。黒色の軍艦部は、トロリ製である。戦後のイゾレッテは、6×6cm専用となり、軍艦部は、アルミ鋳造、後にはプレスとなった。
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カラートは、戦前の1937年から戦後の1957年まで製造された長寿命の製品であった。
戦前のカラートは、全てカラートカセッテによるダブルマガジン方式なので、巻き戻しノブがない。カメラには型式名が明記されていないが、取扱上カラートの後にレンズの明るさを示して分類している。軍艦部には吊り環があるものと無いものがある。
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戦後のカラートには、12枚撮りのカラートカセッテ用モデルと、標準のパトローネ用モデルがある。カラートカセッテ用のモデルでは、カラートの後に「12/レンズの明るさ」を表示し、パトローネ用のモデルでは「36」と表示して分類している。写真左はカラート12/2.8で12枚撮りのカラートカセット用、レンズの明るさは2.8である。形はそっくりだが、写真右のカラート36には巻き戻しノブがある。カラート36には、軍艦部の違いから1948年モデルと1952年モデルがある。
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アグファ メモ
アグファ・アンスコがアメリカで製造したカラートカセッテ仕様の35ミリカメラ。
フィルム送りに特徴があり、裏蓋にある捲き上げ用のバーをスライドさせると、プレッシャープレートの上下にある一対の爪が一齣分送り込む仕組みである。
1939年頃に発売された。
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アルテッサ。120フィルムと620兼用のレンズ交換可能なレンズシャッターカメラ。レンズ交換のために布製の遮光幕が用意されている。レンズ交換時には、先ず遮光幕を引き、その後でレンズ、シャッター、鏡胴をボディから外す。遮光幕を引かないとレンズは外れない。
画面サイズは6×9cmと6×6cmだが、6×6cmへの切り換えにはこの遮光幕を利用している。標準レンズはアンジェニューからU1、同X1の2本、ソム・ベルチオから2本用意されていた。また、ソム・ベルチオから75mmの広角レンズと150mmの長焦点レンズの提供が企画されていましたが幻に終った。カメラの製造はSITO(通称ロワイエ)で、これだけ凝ったメカニズムなのに、なぜ距離計連動としなかったのか不思議だ。
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ドイツ国境に近いアルザス地方のメーカーであるアルザフォトの製品4種。
アジャックス(写真上)は、120フィルムを使う6×6判の大衆向けのカメラ。アルテッサと同様に沈胴式だがレンズ交換はできない。シャッターがフランス製のシンクロコンパー。
アジャックスD(下左)、アジャックスVS(下右)、ダッサス2(2段下左)と続くが、機構、機能とも殆ど違いはない。
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アジャックスD |
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アジャックスVS |
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ダッサス |
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アルタ 35
1957年から58年にかけて約500台製造されたというライカ・のコピー機このアルタは機番から推定すると生産終了間際の製品である。標準レンズはアルタノン50mm F2 で1.5ftまで接近できる。雑誌広告によると製造は三鈴光学工業(株)だが、本体軍艦部にはMisuzu Optical Co .Ltd.と彫刻されていてIndustry(工業)の文字はない。
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オートテラ スーパー
ハカリの寺岡精工所が製造したスプリングによる自動巻き上げカメラの第三弾。1959年の発売。単独露出計を内蔵するスーパーLも発売された。シャッターボタンを押すとシャッターが切れ、指を離すと1駒送られる。
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アレックス
オーストリアのヨハン シュヴアルツバウアーが製造した35ミリカメラ。自動捲き止め機構がなく、駒数カウンターに合わせて捲き止める。画面サイズが24×29mmと中途半端なのは、駒間の不揃いを見越した処置だろうと思われる。
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アカレッテU
50mmと75mmのファインダーが並ぶレンズ交換可能なレンズシャッター35mmカメラ。アカレッテTとUの違いは吊り環の有無。この2台のアカレッテUにはそれぞれ50mmレンズ(写真左)と75mmレンズ(写真右)が付いている。二つのカメラは同じように見えるが軍艦部を良く見ると吊り環の位置に違いがある。50mm付のボディでは、軍艦部両端に付いているが、75mm付のボディでは、やや内側の前寄りに変更されている。しかし、その後の製品から吊り環は消えてしまう。アパラーテ・&カメラバウの製品のうち、吊り環のある唯一のカメラとして貴重なものである。
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スポーツショット シーニア トゥエンティ
1938年頃、オーストラリアのアクマ(ACMA)が製造した、120と620兼用のべークライト製ボックスカメラ。ボディカラーは海老茶色の他に、緑、茶、黒などがあった。(ACMA=Australasian Camera Manufacturers)
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オートレンジ 20 エンサイン
距離計連動のフォールディングカメラ。
裏蓋にも仕掛けがあって、レバーを引き上げると赤窓が開き、フアインダーがマスクされ、同時に内部のプレッシャープレートが下がって捲き取り抵抗を低減させている。
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